1996年08月14日

クリプトスポリジウム原虫による水道水汚染と下痢症

 今年6月、埼玉県でクリプトスポリジウム原虫による集団下痢症が発生し、感染者は数千人に及んだ。

 町営の浄水場などからクリプトスポリジウムが検出されたことから、感染源は水道水とわかった。

 しかし、従来の塩素消毒ではクリプトスポリジウムは死滅しないことから、厚生省は国内外での感染例の詳細な検討、原虫の除去方法の研究、浄水の目標値の設定、感染症が発生した際の対応策の検討をはじめた。
 クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)は本来、ネコ、イヌ、ニワトリ、ウシ、ネズミなどの腸内で増殖する原虫で、大きさは4〜6μm。ヒトへの感染はウシからの報告例が多い。ヒトに感染すると腸内で増殖し、下痢と腹痛を引き起こす。
 一般の人は1〜2週間で自然に治るが、AIDSなど免疫力の低下した人では重篤な症状となる。

 米国では1993年に水道水の飲用によって40万人がこの原虫に感染し、うち40人が死亡するという大規模な感染例が報告されている。

 日本でも1994年に神奈川の雑居ビルで多発した下痢症患者12例からクリプトスポリジウムが検出されている。
クリプトスポリジウムの顕微鏡写真と検査法の詳細

は 寄生虫図鑑(国立予防衛生研究所)で見られます。

 
サイクロスポラ原虫症が流行(米国)


1996年6月

 クリプトスポリジウムと同じ原虫であるサイクロスポラ原虫(Cyclospora)による感染が米国内で流行している。この寄生虫は下痢、腹痛、吐き気、嘔吐を引き起こし、微熱をともなう例もある。

 感染源はイチゴ、ラズベリーなどの果物や飲料水によると見られる。テキサス、フロリダ、ニューヨーク、ニュージャージー、マサチューセッツ、オハイオ、サウスカロライナ、ペンシルバニア、イリノイなど少なくとも300例が報告されている。

 CDC(米国立感染症センター)によるとこの原虫による感染は昨年はわずか3例しか報告されていなかった。
サイクロスポラの顕微鏡写真と検査法の詳細

は 寄生虫図鑑(国立予防衛生研究所)で見られます。
posted by しまねこ at 23:09| 新興・再興感染症